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南米パタゴニアにおける氷河変動メカニズムの解明

世界各地の氷河の中でも最も大きな速度で氷損失が起きているのが,南米パタゴニアにある氷河群です.なぜこのような大きな氷損失が起きているのかを理解するために,現地で氷河の融解量,流動速度,基盤地形などを測定したり,人工衛星によって取得した種々のデータを解析することで最近数十年間の氷河変動を解析しています.

viedma

例えば,下図で示すのは,人工衛星画像から解析した北・南パタゴニア氷原の氷河の流動速度や氷河表面の年々の変動速度をを示しています。例えばUpsala氷河、HPS12氷河、Jorge Montt氷河では、近年大きく氷が失われている様子が見て取れます。

Minowa et al., 2021 EPSL

どのようなメカニズムで氷が失われているのか,その謎を解く鍵は現地にあります.氷河底の基盤地形や氷河流動,カービング,気象観測などを現地で行い,氷河の変動メカニズムを明らかにしようとしています.

2018年から2020年に渡って現地に長期滞在し,複数の氷河湖やフィヨルドで湖底地形測量を行いました.カービング氷河末端の僅かな地形変化に起因して,非常に大きな氷河ダイナミクスの変動が見えてきました.次の課題は,個々のカービングがどのようなメカニズムで発生しているのかを一つ一つ解析し,カービングの発生メカニズムを明らかにすることです.また,海洋性カービング氷河と大きく異なる末端消耗プロセスを持つ淡水性カービング氷河が,このことに起因して数百年,数千年の時間スケールでどのような振る舞いのちがいを引き起こしているのかにも興味があります.Tidewater glacier cycleならぬ,Freshwater calving glacier cycleなどが有るのでしょうか.

Minowa et al., 2021 EPSL

キーワード

パタゴニア,カービング氷河,末端消耗,氷河流動,水深測量

研究成果